11−22(いい夫婦の日)によせて




SS 隣にある導き




シーズン中、いつものように薬師寺と一緒に過ごす夜だった。
二人でゆったりとソファにすわり、スポーツニュースを見ていると、
薬師寺がなにげなく言った。

「なあ、このピッチャーのテンポ、お前に似てるぞ。」

少しだけ触れ合う温もりが心地良く、眉村はウトウトとしていた。
薬師寺は独り言のように続ける。

「でも、腕の角度がおもしろい。」

無意識に言葉を発しているが、恋人からの返答を期待してるわけじゃない。
彼のクセといってもいいだろう。
投手だろうが野手だろうが、多角的に分析するのが好きなのだ。

眉村は閉じかけた瞼をゆっくりと開けると、
テレビに映る若手投手の姿を見た。
なるほど、言われてみれば。
同じリーグなのだから、何度か対戦しているはずなのだが、
そこまで気にしたことは無かった。

「だから何だ。」

ぶっきらぼうに言い捨てると、眠気に負けて再び目を閉じた。
その反応に対し、別に何でもねえよ、と苦笑する声がきこえる。
にもかかわらず、別の球団の試合結果になると、
今度はホームランを打った左打者を食いいるように見つめ、
また何やら語り始めた。
もう眉村に聞こえていなくても、おかまいなしなのだ。


眉村はといえば、先ほどの投手のフォームを思い出し、
再びグラウンドで見るのも一興かと、ぼんやりと思っていた。
やがて、小さな寝息を立てながら、恋人にその身を預けてゆく。

眠りに落ちる寸前、ふわり、と自分の髪をなでる優しい手の感触を感じ、
微かな笑みを浮かべて。


<終>

3年もメジャ腐をしていると、妄想世界のふたりって
すっかり夫婦だなあって思います。

一緒にいるのが当たり前で、
愛し合っていることが前提で、
初めて触れるドキドキよりも、
いつもの温もりに安堵する。


うちの薬眉ってこんな夫婦です。




2009年11月22日 


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