Winter in N.Y
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〜エピローグ〜
タクシーはブルックリンの橋を渡り、窓からは摩天楼が見える。
たった数日の滞在でも、すっかり見慣れた景色を離れるのは忍びない。
冬のニューヨークは、日本の何処よりも寒くて冷たくて、
そして、忘れられないものになった。
こんなにも深く人を愛し、愛されたことに感謝しよう。
薬師寺は小さく呟く。
「メリークリスマス・・・か・・・。」
すると、運転手が何か勘違いしたのか、
訛りの効いた英語で薬師寺に話しかけてきた。
薬師寺が片言の英語で、この街は美しいですね、と言うと、
陽気な黒人の男はうれしそうにニューヨーク自慢をして、
ラジオをつけてくれた。
軽やかに流れる賛美歌を聞きながら、薬師寺は微笑んだ。
メリークリスマス。
今宵、生れ落ちた小さな愛よ。 永遠に。
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