「君とナントカパークにて」 2
◇◇◇
『問題! 巨仁軍の歴代選手会長のお名前を5人上げてください』
「えーっと、ながしまさんと、はらさんと・・・」
軽快な司会者の問いに、寿也は難なくクイズ問題を答えてゆく。
『さすがは佐藤選手ですねぇ!』
「そんなことないですよ」
照れる寿也の後ろには、意外と体力を使ってしまった吾郎が、
なんでこんなことしてるんだ、という顔をして息を整えている。
だが、回答者を交代してみると・・・
「うわ! し、知らねーよ他のリーグの選手なんて!!」
吾郎は簡単なメジャーリーグに関する問題で見事につまずいた。
あと一問吾郎が正解すれば、クリアできるところだったので、
寿也はあからさまに不満顔だ。
「ちょっと吾郎くん!それくらい知っていなきゃ!」
「どうせ俺は寿みたいに頭よくねーからな」
「そんなこと言ってないだろ?」
『まあまあ、お二人さん、そんなに熱くならずに・・。さあいよいよ最終アトラクションですよ』
さきほどから漂う不穏な空気に、ようやく司会者たちも気付いたのか、
ゲーム後の感想コメントもそこそこにCMが流れた。
現場では、互いにそっぽを向いたままの二人を
スタッフたちも心配そうに見守る。
観客席からはひそひそとミスキャスティングでは、
などという囁きも聞こえてきた。
◇◇◇
「大丈夫なのか?」
これは録画された映像が放送されている、ということも忘れて、
薬師寺と眉村は心配そうな顔になっていた。
なんとなく気まずい雰囲気のまま、最後のエアホッケーが始まった。
お馴染みのゲームではあるが、着ぐるみを着た相手チームのお笑いコンビは
長年の経験から相当な腕前を誇っている。
故に、ほぼぶっつけ本番であるゲスト挑戦者は、
いくらアスリートといえども、慣れない競技に無残な結果になるのが常である。
だが、二人の様子が少し違う。
「いい?吾郎くん」
「ああ、わかってるって」
なんということだろう?先ほどまで口も利きたくないような顔をしていた二人の息が
急に合いだした。
そして、最初のうちは苦戦していても、すぐにコツを掴み、
それぞれの表情は今までで一番真剣なものになってゆく。
観客も司会者も見惚れるほどの、見事なまでのチームワークが繰り広げられた。
寿也が後方でしっかりと守り、相手のポイントを許さない。
そして、前方の吾郎の豪腕から繰り出されるスマッシュに、
百戦錬磨のお笑いコンビもタジタジである。
喧嘩をしようが、いがみあおうが、やはり吾郎と寿也の二人である。
’倒すべき相手チーム’が現れたとたん、
自然に最強バッテリーとしてタッグを組んでいた。
あっという間に最後のスマッシュが決まり、二人は圧勝した。
『さすがは超一流のプロ野球選手ですね!勝負強さと精神力でお見事な勝利です!』
「ええ、吾郎くんならやってくれると思ったんです。」
「いやぁ軽い軽い。寿が後ろにいるとおもうと、ガンガンいけたぜ」
テレビ画面の中で、なぁ?と顔を見合わせて微笑みあう二人を見て、妙に動揺してしまうのは自分だけじゃないはず、と薬師寺が眉村の方をチラリと見ると、彼も少し困った顔でこちらを見ていた。
二人は思わず噴出した。
画面上には、エンディングのダーツゲームに意気揚々と挑む二人が写っている。
「全く、心配するだけ無駄なんだよな、あいつら」
公開痴話喧嘩をしたあげく、あんなに仲良さげなところをみせつけられて、
なんとなく、あてられてしまったから、と、
都合よく眉村の肩を抱こうとした薬師寺の動きが止まった。
「なんだよ、この賞品・・・・」
この番組の賞品は、出場者の希望がかなえられるとは聞いていた。
そこに並んでいるのは、ほとんどが寿也の希望賞品という、
キングサイズのダブルベッドに大きな冷蔵庫など、
まるで新婚夫婦がそろえるような家財道具の数々。
なんだか所帯じみてますが、などという司会者の突っ込みにも
寿也はたじろぎもせず、ずっと欲しかったんです、と楽しそうだ。
二人はあいた口がふさがらない。
「・・・・こいつら、とうとう結婚するのか。」
「らしいな・・・。」
「まあ、いいんじゃないのか」
「めでたいな・・・」
急に脱力した二人は、食事がまだ途中だったことを思い出し、
ダーツの行方を見ることなく、席を立ってしまった。
誰もいないテレビの前には、賑やかな音声だけが響き渡る。
『さあ!どなたが投げますか?』
「ここはやっぱりピッチャーの茂野君で」
「おうよ!まかしておけ!! 」
「頼むよ!」
「よっしゃ、いっくぜど真ん中ストライクーー!!」
「ちょ、ちょっとちょっとまって吾郎く───」
「だぁぁぁぁぁ!!」
「ほらーー!ど真ん中はハズレのタワシだって最初からわかってるはずだろ!?」
「うるせーな!!なんで真ん中がダメなんだよ!!」
「最初に確認しないから・・・・」
「ああ!?だったらキャッチャーのお前がサインだせよ!」
「な、訳わかんない!!!」
『それでは皆さんまた来週〜♪』
テレビ的にとってもおいしい終わり方をした二人に、
この後バラエティ番組のオファーが次々来る日も近いらしい。
<終>
「時代屋の恋女房」 木綿一丁様に個人的に差し上げたお中元ssです。
掲載許可をいただき、ありがとうございますv
ちなみに、もう何年もこの番組を見ていないので、
色々と・・・ごめんなさいです(土下座)
雰囲気だけ楽しんでいただけたら、と思います。
失礼いたしましたv
むつみ
2008/7/22
*プラウザを閉じてお戻りください
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