薬眉+ゴロトシ? プロ入り後
みんな de ゴルフ B
急に勝負となったとたん、今までの和やかな雰囲気はどこへやら、
4人は急に真剣な表情となる。
吾郎でさえ、無駄口を叩かずに、まずはトップバッターの
寿也のショットを見守っていた。
空を斬るドライバーの鋭い音がシュッっと響き、寿也のショットが真っ直ぐにフェアウエイに
飛んでいく。軽く250ヤード近くは飛ばしたのではないだろうか・・・?
「今日・・・一番いいショットじゃねーのか・・・?」
優しい顔をした強打者の、ここ一番の勝負強さに、メンバーもさすがに舌を巻く。
続く薬師寺、眉村もそれぞれフェアウエイをキープする好打を放ち、
いよいよ吾郎のティーショットとなった。
「へ・・・え。やっぱ寿也が一番飛ばすのか。やってくれるねえ。」
「・・・まあね。これでも上平さんに鍛えられたからね。」
「・・・おもしろくねーな。」
所属チームの偉大な先輩の名前をだされて、思わずムッとする幼馴染に対し、
余裕の笑顔の寿也を見てると、これもまた、作戦なんじゃないだろうかと思えてくるから
恐ろしい、と薬師寺は思った。
「俺は俺のやり方で、すげーのたたき出してやるよ。」
言い捨てたそのセリフどおりに、
なんと寿也よりもさらに遠くに一打目を飛ばした吾郎。
勝負は均衡していた。
パー5のロングホール。
二打席目からはそれぞれ趣向が別れ、アプローチの得意な薬師寺はあえて
3オンを狙い、パターで決めたい寿也は早々にグリーンにオンしてからパットで寄せる。
そして、眉村の確実な4打目が、最もピンの近くにあった。
だが、その前に、ラフから打った吾郎のアプローチショットは、グリーンを飛び越し、反対側のバンカーに見事にはまってしまっていた。
「だああ!!」
「勝負あったか?」
あまり得意ではないのだろう。 今日ここまで、バンカーから一度でボールを出せた試しのない吾郎は、薬師寺の挑発に、静かな闘志を燃やす。
「まだ勝負は終わってねぇ。」
勝利への貪欲な執念とともに、サンドウエッジ片手に、バンカーへと入る吾郎。
果たして、勝負の行方は__________?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「結局、勝負つかなかったね。」」
クラブハウスのロッカーに響く、さわやかな笑顔の寿也の言葉に、
あとの3人は何やら不満げで。
なんのことはない。
寿也は狙いすぎて一度カップ横を通りすぎて、結局3パット。薬師寺は4オンでピン近くによせておきながら、ラインを読み違え2パット。3オン1パッドで最初にピン傍につけた眉村のボールは、ゆるい上り坂に阻まれてカップ手前で止まってしまったため、同じく2パッド・・・。
だが、吾郎は、空振りと二度のダフリ後もバンカーショットに失敗したにも関わらず、
最後のショットが見事な放物線を描き、なんとそのままカップインさせたのである。
「茂野のアレは信じられねーよ。」
「だが・・・・全員、ボギーだ・・・。」
「ま、結果がすべてってことだ。」
「てめ、この巻き毛野郎、テクだけなら、今日の俺のラストショットは芸術だろ?なあ寿也!!」
「あはは、まあそういうこともあるよね・・・?」
「ああ!?寿也までマグレ扱いかよ!?くっそー覚えてろよ?」
「静かにしろ。茂野。」
・・・・・・・・側から見ればみれば、それはそれは、楽しそうな
アマチュアゴルファーたちのワンシーン。
アスリートたちの休日が和やかに過ぎてゆく。
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ある日の早朝。
寒空の下、ゴルフバックを背負い、マンションから出てきた薬師寺を
迎えに来たのは何と眉村だった。
「・・・しっかし、お前がそんなにハマルとは思わなかったぜ。」
あくびしながら助手席に乗り込む薬師寺の言葉には耳も貸さず、
さっさと車を発進させる眉村。
あれからというもの、ゴルフの魅力にとりつかれた眉村のはまりっぷりはすさまじく、
年末のそのコンペは初出場ながら見事入賞して、野球界でも話題になったほどだ。
孤独なようでいて、バックに守られているマウンドとは違い、最初から最後まで、すべて己の力のみで勝負するこの競技の魅力とりつかれる投手は多いという。まあ、こいつなら、ならなおさら、か、と薬師寺は妙に納得してしまうのだった。
「今日は2ラウンド回るぞ。」
「げ・・・・まじかよ?」
「二人で回るんだから早いハズだ。」
先週に引き続き、今週もつきあっているのだ。今日の夜くらい、二人で
ゆっくり・・・・などど思う薬師寺の思惑など、全くもって想像もつかないらしい。
「ま、いいか・・・。」
シーズンが始まれば、こんな時間を作ることも難しくなるのだ。
淡々と、今日のコースのポイントを語る運転席の恋人を眺めながら、
薬師寺はまんざらでもなさそうに呟いた。
<終>
というわけでオフシーズンにはゴルフデートが多くなった薬眉コンビでした(笑)
ゴルフのスコアと技術については、なんとなく、で書いてますので・・・。(汗) すいません。。。
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