sss<続 サクラ>
結局、二人はいつもの公園に来た。
真夜中の広い公園は花見のためにライトアップされているわけではないので、
暗い景色の中、満開の桜が外灯の光だけで白く浮かびあがる、なんともいえない光景だった。
ここの桜は、花の枝が足元まで伸びていて、近づくとまるで桜の中に入っているような感覚に陥る。
「結局、咲いたと思ったら、すぐ散るんだな・・・」
眉村の声が聞こえていないのか、桜を見上げる薬師寺はめずらしく無口だ。 _____
雪みたいに降ってくる花びらが、彼のくせのある髪にいくつもからむ。
それにもかまわず、さっきからずっと上を見上げてる彼の瞳が、
桜にばかり奪われてるのが眉村は気に入らない。
それでも、この不思議な空間で、二人佇むこの時間がなんともいえず心地よかった。
花びらを取ろうと、薬師寺の髪にそっと手を伸ばした。
その手をつかまれ、あっという間に抱きしめられてキスをされた。
________やっぱり、来年もここで桜色のお前を見るのだろうな、と思った。
<終>
2007年4月4日
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