雪の日に書いた突発sssです。。。
<雪に佇む>
自分は寒くても平気だが、
子供の頃あんなに喜んだ雪景色も、都会で遭遇すると
不便さばかりが気になって、素直に喜べなくなったのは何時からだろうか・・・?
待ち合わせの場所を野外にしてしまったことを、薬師寺は少し後悔していた。
約束したのは先週だったから、仕方がないとはいえ、
人の多い駅前をさけて、少し離れた公園の入り口だなんて、
やっぱり無理して連絡とればよかった、と、無駄にぐるぐると考える。
冬生まれのくせに寒がりの眉村を待たせたくないから、と、
早めに来たはずなのに、
待ち合わせの場所には、傘をさして立つ恋人の姿。
薬師寺は驚いて、走り寄ろうとした。
その時だった。
何を思ったのか、眉村が差していた傘をふわりとはずして、
雪が舞い落ちてくる、くすんだ空を見上げた。
ちょうど外灯がついた夕暮れ時。
明かりに照らされた雪だけが、輝きながら、彼を包んでいるようだった。
雪の煌きを見上げる、まるで子供のような眼差し。
少し開いた口元には笑みすら見える。
その瞳に、舞い落ちる雪のカケラが一粒、落ちた。
冷たい刺激が、彼の表情をさらに無邪気にした。
反射的に強く目を閉じたその顔が、
次の瞬間、イタズラが見つかった少年のように、
ちょっとバツの悪い顔になる。
そして、少し目を擦りながら周りを見渡した眉村は
立ちつくす薬師寺を見つけ、穏やかな笑顔になった。
____雪なんて久しぶりだから、早く来てしまったんだ。
愛おしさが溢れてくる。
苦しい程に。
薬師寺は思わず、ここが外であることにも構わずに、
彼を強く抱き締めてしまった。
ゆらりと大きく揺れた傘が、降り積もった雪の上に落ちる・・・・。
<終>
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