<今宵も、君と > 1

───今日は、クリスマスなんかじゃなくて、お前の誕生日だから。
薬師寺が眉村を連れてきた店は、繁華街から少し離れた路地にある、小さな鮨屋。
暖簾をくぐると、美しい木目のカウンターの、甘めの色が目に飛び込んできた。
大事そうに桐の箱に入れられた寿司ネタをさばく割烹着の大将の人懐っこい笑顔と、
手際のよい女将の接客はとても居心地が良い。
先付けに出された品を口に含めば、その確かな腕前に思わず眉村は薬師寺の顔を見た。
すると彼は得意そうに、
「な?いい店だろ?知る人ぞ知る名店だぜ?」
と、うれしそうに笑った。
illustration by 木綿一丁 様
author むつみ
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