薬眉+ゴロトシ? プロ入り後 








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眉村が精神を集中させてボールを見つめる。

無駄のないバックスイングから一転、しなやかな
モーションで体が回転し、いとも簡単にボールは空高く飛んで行く。


「ナイショ!!」
「やるなぁ・・・」


薬師寺も寿也も、とても今日がコースデビューとは思えない眉村のそのスイングに
惚れ惚れとしていた。

プロとしての抜群の運動神経はもちろんのこと、集中力、精神力も超一流なのだ。
コツさえつかめば、これほどまでにゴルフに向いてる奴もいないかもしれない。



それでも、慣れないうちは散々で、最初のホールでは林の中にボールを叩き込み、
「・・・自分で・・・拾うのか?」
と言って薬師寺の顔を引き攣らせたりはしたのだが。
(むろん、この時、薬師寺が黙って探しに行ったことは言うまでもない)


そして、やれ何故いちいちクラブを取り替えるんだとか、打順に納得がいかねえだの、
相変わらず文句を言いながらも、勝負事に熱くなるタイプの吾郎の腕も、
ホールを重ねるごとに上達していくのだからたいしたものである。


「すごいよ!吾郎君、このパット決めたらパーだよ!」
「ああ?パーでもグーでもカンケイ・・・ねーっよ!」

だいぶ余裕がでてきたのか、天性の勘が冴えるのか、少し長めのパットを上手く決めた吾郎。


「さすがだな・・・茂野」
「ああ・・・確かに茂野の腕は認める・・・認めるが・・・・」


素直に賞賛を送る眉村の横で、薬師寺が心なしか、震えているように見えたのもつかの間・・。
「おまえ!!マナーはサイテーーーだ!!」
「ああ?んだと?」
「いいか!?ティーグラウンドではデカイ声でしゃべるな! 
 バンカーショットのあとはちゃんと砂をならして直しとけ!グリーンでラインをおもいっきり
 踏むんじゃねえ!!」
急に襟首つかまれて、吾郎も黙ってはいない。
「うるせーよさっきから!!知るかよそんなこと!」
「知るかじゃねぇ!一回言ったらとっとと覚えろ!ゴルフは紳士のスポーツなんだよ!」


そうやってわめき散らしてる時点で、既に薬師寺も紳士ではなくなっていることに、
気付いているのかいないのか・・・。
寿也と眉村は顔をみあわせて苦笑いしている。
吾郎に振り回されて、今日の彼のスコアが今年の自己ワーストを記録しそうなのも
イライラの原因なのだろう。
それでも、寿也に次いで二番手なのだが・・・。
彼なりに納得がいかないのだから仕方ない。


「まあまあ、気をとりなおして。次は最終ホールだよ。」


寿也にたしなめられ、セルフカートに乗りながら、気持ちのいい風に吹かれると、
少しは頭が冷えたのか、おとなしくサンバイザーをかぶりなおす薬師寺。
吾郎はといえばすっかり機嫌もなおり、軽く鼻歌まじりに寿也にちょっかいを
だしている。



最終ホールはロングホールで、パー5。
何を思ったのか急に吾郎が勝負しようと言い出した。


「吾郎くん、今日は勝負も何も・・・」
「いや、このままじゃボロ負けだ!」


いくら調子がでてきたとはいえ、前半戦でOBやら池ポチャやら、
空振り含めて叩きまくったせいで、
吾郎のスコアはとてもじゃないが、最終ホールだけで挽回できるようなものではなかった。


「・・・まさか、勝負してるつもりだったのか・・・?」
「おいおい・・・」


眉村も薬師寺もあきれながら、そのこだわりに何やら急に昔を思い出す。


「お前らこの最終ホールで一発勝負しろや!」

ここまでのスコアをチャラにするなんと自分勝手な宣戦布告。
寿也はため息まじりでしょうがないなあ、とつぶやくと、
急に真面目な顔になった。


「いいよ。そのかわり、本気でやらせてもらうよ?」


薬師寺も、眉村も同感のようだ。
「ああ。やってやるよ。」
「・・・おもしろい。」


「へっ!やっぱ そうこねぇと!」

吾郎の不敵な笑いと共に、4人の間に不思議な緊張感が漂った。







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